2012年11月27日火曜日

日本を尊敬される国家に導く医療・介護

一昨日「全国在宅医療推進協会」の勉強会で武見敬三東海大学政治経済学部教授の講演を聞きました。
武見氏といえば 前参議院議員で元ニュースキャスター そしてなにより「ケンカ太郎」の異名をとった武見太郎元日本医師会長の子息として有名です。
この日の演題は「グローバル・ヘルスから見るわが国医療制度改革の系譜」で まさに政治学者として面目躍如といえる内容でした。国際社会において「わが国の保健医療が比較優位分野」であることは「すべての人々が」「受け入れ可能なコストで」「適切な医療サービスに」「アクセスできること」という2005年の Universal Coverage に関する WHO 総会決議によっても明らかだと述べました。
「"quality" "access" "cost"という3つの目標(評価基準)を同時に達成することは至難」という 先日のコラム「多職種に共通するプロトコルを」で触れた島崎謙治政策研究大学院大学教授の発言と裏腹の関係にあります。
さらに武見氏は「21世紀の国際政治において『経済大国から先導的成熟国家』としての役割を担うことが 地政学を越えた新しい外交・安全保障上のメリットを生む」と わが国の未来のあり方についても言及しました。
領土問題で揺れている日本が 軍事だけに頼らない国際社会での地位を確立する卓見だと感じました。
「わが国の医療・介護は アジアを中心に 官民一体でシステムを含めた輸出という新たなスキームを生み出すことで成長産業となり得るだけでなく 尊敬される国家という地位をもたらす」というに私の持論に大きな論拠を与えてもらったようで 意を強くしました。
ちなみに「ヤンキー先生」こと義家弘介参院議員が鞍替えして 衆議院神奈川16区から出馬するため 2007年の参院選で次点だった同氏は 繰り上げ当選を果たすことになりました。

2012年11月20日火曜日

多職種に共通するプロトコルを

17日土曜日に「医療介護福祉政策研究フォーラム」(虎ノ門フォーラム)の第1回シンポジウム「医療・介護の『2025年問題』を乗り切るために」に行ってきました。
代表理事は中村秀一内閣官房社会保障改革担当室長。厚生労働省老健局長や社会・援護局長を歴任し『2015年の高齢者介護』をまとめたことで名を残しました。
退官した後いったんは社会保険診療報酬支払基金の理事長に就任しましたが 再び最前線に返り咲いた敏腕行政マン(それだけに敵も少なくないでしょう)です。
入省当時の想いを初志貫徹している「公僕」の一人であることは 誰しも認めるところではないでしょうか。
わが国の医療・介護政策についてシンポジストの島崎謙治政策研究大学院大学教授は「"quality"(質の向上)・"access"(アクセスの確保)・"cost"(できるだけ低廉なコスト)という3つの目標(評価基準)を同時に達成することは至難。どれかひとつを犠牲にすることを選択せざるを得ない」と日本の医療の特長である「フリーアクセス」の見直しを示唆しました。
また地域包括ケアの鍵となる「医療と介護を横断したシームレスな連携」が進まない理由のひとつに「『インターフェース・ロス』の発生による情報やサービスの脱漏がある」と述べました。
もともと「インターフェス・ロス」とは 機種等が異なるために情報がうまく伝わらないことを意味する情報技術用語ですが 医療・介護の分野でも異なる組織・職種間で情報伝達が行われる場合には同様な現象が起きます。
医療職と介護職の間だけではなく 医師・看護師・保健師・ケアマネジャー・介護福祉士・ケースワーカーなどなど おのおのの職種間には職能・教育・思考方法に違いがあるためです。 
このギャップを埋めるのは簡単なことではありません。異なる職種同士の理解には 共通のプロトコル(相互に決められた約束事)や言語が必要です。
ICF(国際生活機能分類)などもそのひとつといえますが その普及には教育システムの整備が欠かせません。
『介護経営白書2012年度版"介護維新"現場からの介護人材教育改革』「特別座談会」堀田聰子独立行政法人労働政策研究・研修機構研究員が述べているように「職業プロファイルの見直しと資格プロファイルの整理による横断的な教育体系の再編」がなにより必要だと改めて感じました。

2012年11月19日月曜日

アーティストの技と魅力

週末荻窪音楽祭に出かけました。
今回で25回を数える市民が「住みやすい街」づくりをめざし生み出した素敵なイベントです。
街のそこかしこで手作り感にあふれた50弱のコンサートが4日間にわたり開催されました。
「(バリアフリーで)若者や高齢者も快適に過ごせ 子供達が明るく元気に育っていける街づくり」というコンセプトはまさに「地域づくり」の基本といえます。
とりわけ興味深かったのが「シャコンヌを聴け!!」です。
4人のアーティストがヴァイオリン・ピアノ・ギターでバッハの「シャコンヌ」(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番)を弾き比べるというユニークな企画でした。
バッハの原曲がブラ―ムスやブゾーニの手にかかると 左手一本の簡素なもの・超絶技巧の華やかなピアノ曲に生まれ変わります(写真はピアニストのお二人)。
同じ曲を1回のコンサートで4回聴くというのは生まれて初めてですが 飽きるどころか音楽の奥深さに引き込まれたようになりました。
同じメニューでもアーティストのコンセプトや感性・技術によって 人に与える感動は千差万別です。
介護事業にも同じことがいえますね。
ケア・在宅・自立・地域…をどうとらえるか どう創造したいかによって できあがるサービスはまったく異なったものになるのでしょう。

2012年11月14日水曜日

プロフェッションでなければリスクは取れない!

先週末「在宅事業者が取り組む『住まい』サービス-地域包括ケアが求める介護事業者の使命」フォーラムを開きました。
10月31日のブログ「賃貸住宅事業は介護保険事業!?」にも書いたように「『餅は餅屋』という理にかなった事業行動をとっていくことを忘れないでほしい」というのがひとつの目的でした。
「介護事業者が『サ高住』をオーナーに立ててもらう場合 35年間一括借上げを保証するため経営者個人が連帯保証人として多額の債務保証をするケースもある。建設費(60室)4億円を25年借りると 銀行には月額200万円超の返済が必要。オーナー利回り7%保証という条件で介護事業者が35年間一括借上すれば月額230万円。それが35年では9億8千万円もの債務となる。1部屋の家賃を6万円と仮定すれば 80%の入居率でようやく黒字(290万円弱)になる」と株式会社やさしい手の香取幹社長はそのリスクの大きさを語ってくれました。
右の図の①~⑤のどこから収益を得るのかによって ビジネスそのものが変わってきます。
土地の所有者・建設者・住宅運営者・サービス提供者のそれぞれが専門性に基づいて 責任と成果を分担するスキームの構築が不可欠なのです。

2012年11月8日木曜日

一人で歩けば徘徊 みんなで歩けば地域防犯隊

私がかかわってきた「幼老共生型」の事業所がいよいよ竣工間近になりました。
東京都文京区駒込(4丁目35-15)にオープンする医療法人創健会(多湖光宗理事長)が運営する「文京ひかりの里」(認知症高齢者グループホーム3ユニット・事業所内保育所)です。
運営方針は「お年寄りの底力を生かそう」「子育てと仕事の両立支援」
2004年国際アルツハイマー病協会国際会議で奨励賞を受賞した多湖光宗院長は「病(気)」ではなく「人(間・生)」を看る特筆できる在宅医です。
これまでも三重県桑名市で 世代間交流を手法として高齢者ケアと次世代育成を融合・連携させることで「対費用効果」「ケアの質の向上」「高齢者の生きがいづくり」「教育的効果」など一石4鳥を狙う「幼老統合ケア」「能力活用セラピー」を実践してきました。
「一人で歩けば徘徊 みんなで歩けば地域防犯隊」というキャッチフレーズもその中から生まれたものです。
みなさんも ぜひ認知症ケアの最前線を実感してみてください。