2010年11月22日月曜日

「暴論」を吐かないのがプロフェッション

民主党政府の閣僚による「放言」「失言」が相次いでいます。
何よりも言葉を武器にするはずの政治の専門家の質の低下は 目を覆うばかりです。
プロフェッションは「乱暴な」物言いや考え方をしないものです。
領土問題や国際関係における日本の立場を強化するために 安直に「核武装」を口にする人間は 外交や軍事のプロとはいえません。
介護や社会福祉の実務家や専門家にも そういった傾向が見えるのは残念で仕方がありません。
「介護サービス情報の公表」についての一部の暴論も その例です。
現状の仕組みが 本来の理念や目的にかなったものではないというのは私もそう思います。
この制度の最大の欠点は 利用者の選択に資するものとしながら 使い勝手の悪いものになっているという点です。
これはわが国の行政システムの欠陥が生み出したものだという見解にも 同意します。
しかしだからと言って この制度が「一部の利権を肥え太らせるための装置でしかない」という意見には組するものではありません。
小山秀夫兵庫県立大学大学院経営研究科医療マネジメント専攻教授は 研究論文『介護老人保健施設および慢性期医療機関におけるコンプライアンス経営体制と情報公表制度についての認識との関連』(介護経営第5巻第1号/日本介護経営学会)において「介護老人保健施設ならびに慢性期医療機関の双方おいて コンプライアンス経営といった場合に意識して取り組んでいる内容として最も多いのは 医療法もしくは介護保険法等の法令遵守であり 次いで利用者の権利擁護であった。情報公表制度がコンプライアンスの向上に役立つと考えている場合 コンプライアンス経営体制を推進している傾向があり サービスの質の向上や労務環境の改善に取り組んでいる意識が高かった」という報告をしています。
続けて同論文は「コンプライアンス経営体制構築の自律的な取り組みを促すには 情報公表制度等の利便性向上を図り 活用が推進されることが重要と考えられる」としています。
この見解が正しいかどうかも含めて 専門家同士のていねいな考察と議論が交わされる土壌が生まれなければ 介護事業やサービスは成熟したものとはならないでしょう。

2010年11月15日月曜日

在宅が変われば施設も変わる

12日「介護保険部会・地域包括ケア研究会の読み方-2012年 あなたの事業はどう変わる!?」というタイトルの連続セミナーの第1回を開催しました
この日は「地域包括ケア研究会」報告書の意図を丹念に説明しました。
経営者のみなさんは全員 大きな危機感を抱いて参加されています。
話が進むにつれ「心臓が縮む思いだった」と漏らした方もいらっしゃいます。
それほど これから明らかになる介護保険制度改革はパラダイムシフトを伴う大改革だということです。
実際 この報告書には 2025年には「介護保険施設」は「在宅復帰に向けて生活期のリハビリテーションを集中的に受ける必要がある者のために リハビリテーションスタッフが重点配置された施設」で「病院と住まいの中間施設として位置づけられている…こうした機能を持たない従来型の介護保険施設は『ケアが組み合わされた集合住宅』として位置づけられている」「施設を一元化して最終的には住宅として位置づけ 必要なサービスを外部からも提供する仕組みとすべきである」といった「過激」ともいえる表現があふれています。
当然 施設経営者からは大きな反発が生まれています。
一方 川合秀治全国老人保健施設協会会長は この報告書を受けて導入が検討されている「24時間地域巡回型訪問サービス」について 老健の将来を決定するものとしたうえで「われわれの本来の使命の一つである地域支援に踏み出したい」と述べています。
批判や抵抗だけで保身できる時代は もう過去のものです。
「いいとこどり」ではない 真の「変革」ができる組織だけが 次代を担うことができるのです。

2010年11月8日月曜日

福祉を「人的資源投資」ととらえた改革を

11月5日付の日本経済新聞に「『市場』と『福祉』の改革両立を」というタイトルで 渡辺聰子上智大学教授の論文が掲載されました。
渡辺教授は「従来の日本は市場主義も福祉改革も不十分」「福祉を『人的資源投資』ととらえ改革進めよ」と 主張します。
日本にとっては 市場主義改革の必要性も福祉改革の必要性も欧米におけるよりもずっと大きく 英国のように「自由放任の市場主義」と「行き過ぎた福祉国家」の両方を交互に経験する暇はない と述べています。
そこで 欧州型の社民主義でも市場主義でもない福祉制度改革を実現するための基盤になるのが「ポジティブウェルフェア(積極的福祉)」であるといいます。
これは 福祉を個人や組織の自立を助ける建設的・積極的な「人的資源投資」としてとらえる考え方のことで 特に「可能性の再配分」をもたらす教育の役割は重要としています。
まさに わが意を得たりという論旨です。
わが国の歩む道は「経済再生を果たし 健全な福祉制度を発展させる」しかないのです。