2009年12月31日木曜日

2010年は「介護新時代」の「はじめの一歩」

政府は 昨日の臨時閣議で 持続的な経済成長をめざした新成長戦略の基本方針「輝きのある日本へ」を決定しました。
しかし「関係府省が持ち寄った案をまとめた新味のないアイデア」「抽象論で具体的な政策に踏み込んでいない」など メジャー各紙の反応は冷ややかです。
医療と介護を合わせた「健康」分野の戦略は
ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
【2020 年までの目標】『医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出・新規市場約45 兆円・新規雇用約280 万人』

です。主な中身は
(医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業へ)
…世界のフロンティアを進む日本の高齢化は ライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)を力強く推進することにより新たなサービス成長産業と新・ものづくり産業を育てるチャンスでもある。したがって高い成長と雇用創出が見込める医療・介護・健康関連産業を日本の成長牽引産業として明確に位置付けるとともに 民間事業者等の新たなサービス主体の参入も促進し 安全の確保や質の向上を図りながら 利用者本位の多様なサービスが提供できる体制を構築する。誰もが必要なサービスにアクセスできる体制を維持しながら そのために必要な制度・ルールの変更等を進める
(アジア等海外市場への展開促進)
医療・介護・健康関連産業は 今後 高齢社会を迎えるアジア諸国等においても高い成長が見込まれる。…
(地域における高齢者の安心な暮らしの実現)
医療・介護は地域密着型のサービス産業であり 地方の経済・内需を支えている。住み慣れた地域で生涯を過ごしたいと願っている高齢者は多く 地域主導による地域医療の再生を図ることが これからの地域社会において重要である。具体的には 医療・介護・健康関連サービス提供者のネットワーク化による連携と情報通信技術の活用による在宅での生活支援ツールの整備などを進め そこに暮らす高齢者が自らの希望するサービスを受けることができる社会を構築する。高齢者が安心して健康な生活が送れるようになることで…新たなシニア向けサービスの需要も創造される。また高齢者の起業や雇用にもつながる

となっています。
悲観的に考えるのではなく これまで取り上げられなかった介護の成長産業化が明示された意義を評価しましょう。
2010年6月に示される予定の「工程表」で より具体的な道筋が示されるよう 私も力を尽くしたいと思います。
新しい年が「介護新時代」の「はじめの一歩」となることを期待したいと思います。

2009年12月25日金曜日

生活援助一律排除のあきれた自治体に3度目の通知

本日 厚労省老健局振興課から 各都道府県介護保険主管課に向けて
「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」
の通知が発出されました。
生活援助の取扱いについては
「適切なケアプランに基づき 個々の利用者の状況に応じて具体的に判断されるぺきものであるにもかかわらず 依然として同居家族等の有無のみにより判断されているという指摘がある」
ためです。
この振興課長通知では 各都道府県が市町村に対して
「生活援助等において同居家族等がいることのみを判断基準として 一律機械的にサービスに対する保険給付の支給の可否について決定することがないよう 改めて周知徹底」
することを求めています。
同趣旨の通知は 2007年12月20日と2008年8月25日に続いて なんと3度目になります。
保険者の勝手な判断が 事業者のみならず 最大の受益者たるべき利用者・顧客にまで大きな不利益を与え続けているという現実を どう受け止めればいいのでしょうか。

2009年12月18日金曜日

厚労相「世界一の介護ノウハウ」の輸出に言及

長妻昭厚生労働大臣は 昨日の日本経済新聞の単独インタビューに
「介護は利用者が今後すごく増える分野だ。日本の介護サービスにはノウハウがある。特許がとれる分野ではないか。これから先進国もみんな高齢化するわけで 特許を取ったら世界一の介護ノウハウを輸出するという発想も持てる。非常にビッグビジネスになる」
と答えています。
厚生労働省関係者が このような内容を公に発言したのは 初めてのことです。
年来の私の持論が認められ 意を強くしています。
介護事業は「金食い虫」ではなく「日本の経済成長と国民生活向上の牽引車」となる可能性を秘めているのです。
これに対して 常に守旧派は すわ「弱者切捨て」「福祉の心・ケアの後退」といった 的外れな非難を浴びせてきます。
社会保障や弱者対策といったセーフティーネットは 国や自治体の本来の義務であり その重要性が減ずるものでないことは当然です。

2009年12月17日木曜日

「キャリアパス」は事業者の創意工夫を尊重したものに

11日「介護職員のキャリアパスに関する懇談会」が開催され 介護職員処遇改善交付金の交付要件として 来年度以降新たに導入される「キャリアパス要件」について 関連団体や有識者へのヒアリングが実施されました。
この懇談会での議論などを参考に 来年3月末までに具体的な要件を決定する予定です。
私も14日に 所管の老健局振興課を訪問し 次のような意見を述べてきました。
○キャリアパス設定の目的は あくまでも「質の向上」にある
○これまで公表されてきたモデルは ほとんどが施設系団体の手によるもので 介護事業者の多くを占める 小規模事業者には適合しない
○新設される要件は 個々の事業者の創意工夫を尊重し「縛り」は設けてほしくない
○自治体の恣意的なローカルルールで 事業者を戸惑わせないでほしい

「手段が目的化」されないよう切望しています。

2009年12月14日月曜日

鳩山首相に提言しました

12月12日(土)鳩山由紀夫首相に レクチャーを行う機会を得ました。
首相が「全国ボランティアナースの会 キャンナス」の松戸支部を視察したときに 私も同行させていただいたためです。
同会の菅原由美代表・安西順子松戸支部代表とともに
●「看護師に1人開業権を認める」などの規制緩和が必要なこと
●介護や医療が「保険」事業だけにこだわらず「生活支援サービス事業」という新たな視点で 国民のニーズに応えることができれば 雇用だけでなく 社会的な富を増大させる 新たなマーケットを生み出す産業に変革できること

を説明しました。
首相も理解を示され 前向きな検討を約束していただきました。
視察終了後の記者会見でも
「キャンナス あの看護師さんの方々がね ボランティアでいいお仕事をされて 今まで公的な支援というのは介護がしっかりとやるんだけれども 公的な支援になかなか入らない生活支援のものがたくさんあるんです。そういう生活全般にわたる支援をしようとしても国の支援策がない。そこで 自分たちが手弁当でやらなきゃいけない。ある意味ではものすごくいい仕事をされているのにそういうところにうまく合うような支援策がないという思いを感じましたから ここもしっかりとですね 私は手当をする必要があると思っております」
と首相は発言され 大いに意義があったと感じています。

2009年12月4日金曜日

理不尽なローカルルール

政府が経済危機対策の一環として「介護基盤緊急整備特別対策」(3年で合計約3,000億円の事業規模)を実施して 特養やグループホームなどの施設整備を積極的に推進していることはご存知のことと思いますが 現在その活用は進んでいません。
制度がわかりにくく そのための要綱などの整備が煩雑なため 自治体の動きが悪いという点が その要因のひとつです。
対策の趣旨を理解し 積極的な活用をぜひ望むところですが 誤った理解をしている自治体があるのも事実です。
たとえば「介護基盤緊急整備等臨時特例交付金」では 小規模多機能やグループホームについては 従前は1か所当り1,500万円だった整備費の補助額が2,625万円に上乗せされていますが その対象を社会福祉法人や医療法人等の非営利法人に限定している市町村があります。
厚生労働省老健局の高齢者支援課に確認しても「国は民間企業を排除しているわけではない。そのような指導を行っている市町村があるとは承知していなかった」と述べています。
不況対策という事業目的を全く理解しない自治体の「理不尽なローカルルール」には 事業者自らが 声を上げていかなければなりません。

2009年12月3日木曜日

経済的理由で4割が有料老人ホームに入居できず

日本政策投資銀行は「民間病院の経営環境と高齢化社会へ向けた対応」と題したレポートで 2035年の介護施設利用者は 2008年時点に比べて約136万人増加すると見込んでいます。
同レポートによると 介護施設の利用者は 2035年にかけてすべての都道府県で増加が見込まれますが 介護保険3施設は 財政的な制約により 今後大幅に増加することは想定しづらいと指摘しています。
そこで 施設需要への対応としては 有料老人ホームなどの増加が期待されますが このうち39.8%の人が 経済的な問題から 有料老人ホームへの入居が困難となる可能性があるとしています。
平均的な有料老人ホームの利用者負担月額(19万円)が 介護保険3施設(平均6万9000円)と比べて高額だということが理由です。
昨日のブログに書いた療養病床の問題もそうですが 在宅誘導のためには「住」が最も大きな解決課題のひとつです。
政府には わかりづらい高齢者住宅施策の整理を速やかに望みます。
一方 事業者にとっては ニーズに対応したサービス提供が 大きなビジネスチャンスとなります。

2009年12月2日水曜日

マニフェストと国民の利益の関係

日本慢性期医療協会は11月27日 毎日新聞の社説「療養病床削減計画を実行せよ」(11月23日)に対して意見表明を行いました。
社説は 長妻昭厚生労働大臣が 民主党がマニフェストに掲げた「療養病床の削減計画の凍結」を改めて表明したことに関して「脱社会的入院の観点から理解できない」とするものです。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20091123k0000m070110000c.html
これに対し同協会は「療養病床」についての社説には 一部に誤解と偏見があるとしたうえで
○ 2006年7月から導入となった医療区分により 急性期病院の人工呼吸器患者や重度の後遺症の患者など長期入院患者の入院が増え「社会的入院の温床」とは呼べない状況になっている
○ 最近の療養病床には 生死を境とする重度患者が多く 一般病床にも療養病床にも慢性期の医療が必要な患者が増えてきている
○ 膨大な数の疾病を抱えた高齢者への対応は 在宅サービスだけでは限界があり 療養病床数を増床させない政策のままであれば 社会的要請にとても応えられない
と訴えています。
http://jamcf.jp/chairman091126.html
「マニフェスト至上主義」は妥当なのか 在宅中心のサービス提供体制への道筋はどうつけるのか そして国民の受益と負担の観点から もう一度 議論を行うべきです。